8

準々決勝の日

 10月23日(土)は準々決勝、開催国ウェールズ対オーストラリアが行われた。残念ながらこの週末は毎週の観戦による移動時間とチケット等の高出費、勉強(一応学生なので…・・)の為、地元レスター(ロンドンから北に電車で一時間半)に残ることにした。レスターと言えばイングランドでスポーツが一番と言っていいほど盛んな街である。ラグビーではレスタータイガースが昨シーズン、国内のリーグで優勝、今年のワールドカップにおいてもイングランド代表選手を一番多く抱えているクラブである。サッカーではレスター・シティー、これもリーグの上位に常に位置し、人気高いグッピー選手を代表に送っている。クリケットも優勝を重ねており、いわばスポーツ都市である。その期待もあってか、ワールドカップはパブでのテレビ観戦にとっておくとして、地元レスタータイガース対ブリストルの試合にまず足を運んだ(いわば、日本で行われている社会人リーグのようなもの)。
 大学の寮から徒歩15分。今思うと、本当はウェールズ戦へ行けない自分への慰めの為に行った試合だった。正直言って、あまり期待していなかったのである。その理由として3つ。一つは、シーズン始めと言うことでチームも観客も盛り上がっていないと言う予想。二つ目は、ワールドカップと言うイベントが世間を騒がしており、クラブレベルとはかけ離れた質の高い国際級ラグビーが簡単に味わえること。最後は人気選手・看板スター達がそのイベントへ出張に行っているため、一軍で試合が組めないこと。
 しかし、15分の徒歩は、僕の予想を大きく覆した。そう、一時間前であったにもかかわらず、顔にペイントした娘を抱くお父さん、手をつないだおじいちゃんとおばあちゃん、いくつもの家族が連れ立って息子達の運動会へでも応援に行くように街を騒がしく横断していた。しかもほとんどの人が赤、白、緑のタイガースグッズ(マフラー、手袋からラガーシャツなど)を着用。皆友達である。試合開始時には満席。およそ8000人。これは今回ワールドカップにおけるアイルランドやスコットランドで行われた(地元が出ない)予選の観客数よりはるかに多い。
 さて質はどうか?いやいや面白いではないか。ビッグプレーが続出のわりに、それを狙いすぎての大ミスが少ない。締まっている。隣のおじさんが言う、「若い選手やピークを越したベテラン選手が、今日、メンバーに入っているんだ。彼らにとっては大きな見せ場だよ。」 しかし、もし、大きな見せ場だったら個人のアピールに走るのでは? その疑問を投げかける。おじさんが背番号2番(主将)を指差して言う、「それをまとめるキャプテンやリーダーも、その器量をアピールするんだ。」続いて「個人のスピード、パワー、スキルなんて、コーチはすでに分かっているよ。要はいかにチームに貢献できる選手かどうかを見ているんだ。選手もそれくらい気づいているよ。」 単なるサポーターの一予想とは思えなかった。この発言が当たっているいないにしろ、プレーヤー個人のやる気をかみしめて味わい、チーム作りの過程を共感している。彼らはビックプレーを賞賛し、時にブーイングするが、一つのプレーに一喜一憂しなかった。
 この試合、レフリーのミスジャッジが目立った。2流だったのかもしれない。観客は早々に気づいている風で、ブーイングがおさまらない。前半半ば、ウイングの選手がブリストルの余ったバックスラインを早い出足で猛タックル。しかし、レフリーは高々と右手を上げ長い笛、オフサイド。ブーイングと共に「Iagree with you!!(お前が正しい!分かってる俺達は!)」とウイングを勇気付ける言葉が一斉に飛ぶ。一人ではない。ウイングは照れながら素早く位置に戻る。そう、観客は文句と応援だけではない。一つ一つを評価しチームを抱えているのである。その直後、タイガース、8、7次攻撃の末、フランカーがコーナーにトライ。8000人総立ちと歓声。コンバージョンのゴールキックにキッカーがボールを立てる。「シーーーッ」また遠くから「シーーーッ」。息を呑む静けさと緊張がレスターという町のホンの一画だけに、しかも一瞬、漂った。ゴール成功とともにさらに大きな歓声。近頃、珍しくなってしまったゴールキック前の神聖な無音。久々味わった。この試合、レスターがシーズン3勝目を上げ無事に町の運動会が終わった。

 その後パブで準々決勝ウェールズ対オーストラリアを見た。その夜、われら同期「中竹組」の異端児!?、末松茂永(フルバック、現在ニュージーランド留学中)からメールが届く。

*******************今日の試合見たかな?ウェールズとオーストラリア?ウェールズの敗戦の原因は単純。それは観客にある。レフリーの笛すべてに騒ぎ過ぎ。ブーイングとそうでないところを使い分けられなかった。それゆえ、レフリーは、いたって冷静に笛を吹きかつ、オーストラリアびいきのように吹いた。明らかなオーストラリアのオフサイドを吹けなかったのは、そこにあると思う。
 なぜ伝統あるウェールズの観客の質が劣化したのだろうか。いろいろな理由があるだろう。ワールドカップによっての即席な観客が増えたこと、今だかつてない観客を収容できるスタジアムの設立、ここ数年の低迷で観客が育たなかったことの3つが考えられる。いずれにせよ、今日の負けは、観客にある。(まあ、もし観客がよくても、勝てたかどうかは疑問だけど。)オーストラリアは確かに強いが、ウェールズは今日は勝つチャンスが十分にあった。**********************

 同じ日に、地球の裏側で、違う試合を見て同じことを考えた二人(気持ち悪い!)。単なる偶然ではあるが、観客の問題は根が深そうだ。では、観客はどうすべきか?そんな答えは一つではないし、それぞれ個人の自由であると言われればそうである。しかし、レスターにおいて、最初に「シーーーッ」っと言った人は偉いといいたい。レフリーに怒りの言葉を投げるよりも、選手の気持ちを尊重する方が温かい。選手の意識と観客の意識との距離。そんなことを考えた一日だった。

 今回も実際のゲームとは全く違い、自分自身の視点で書いてしまいました。ごめんなさい。準々決勝はすべてテレビ観戦だった為、技術面は後日発表します。いいゲーム盛りだくさんでした。

 それにしても、アルゼンチン、感動をありがとう。あなた方は人間が本気になるときの力強さ、真の集団が発するある種の怖さを知らせてくれました。敢闘賞をお捧げします。残念なことにフランスに負けてしまいましたが、今回ぼくが一番注目していたチームでありました。(興味ある人は、サモア戦、アイルランド戦、フランス戦をお勧めします)

9

テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル