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ジャパン対アルゼンチン
10月16日 19:00ミレニアム・スタジアム (カーディフ)

 最終予選、これで負けると99年ワールドカップにジャパンは終止符を打つ。スタジアムに向かう途中、たくさんのウェールズ人に「がんばれよ、応援するからな!」と励まされた。アルゼンチンが69点差をジャパンにつけて勝てばウェールズがDプールで2位に転落すると言う理由が主だっただろうが、ジャパンの速いラインを期待しているのは日本人だけではなかった。
 「時間」。同じ時間でも、とても長く感じるときとすごく短く感じるときがある。ラグビーの試合に関して言えば、短く感じるときは往々しにしてゲーム・パフォーマンスの少ないときである。ここでいうゲーム・パフォーマンスとは、全員がグランドでプレーをしている場面である。連続する展開攻撃だったり、ゴール前でのサイドの鬩ぎ合いなど(簡単に言えば、ワクワクはらはらするプレーのこと)。
 結論から言えば、この試合は今までのジャパン戦で一番短く感じた。気合が足りないとか、スキルが劣るとかを言っているのではない。ゲーム(勝負)自体をされてもらえなかったのである。アルゼンチンにとって、この試合は勝ちさえすればいい試合であった。もし、大差をつけて勝ってしまえば、2位グループでのトーナメントで強敵にあたる可能性があり、おそらくその後すぐにNZ/オールブラックスに当たるゆえ、3位通過がとてもおいしい位置だったのだ。
 前回のテストマッチでジャパンは、アルゼンチンに勝ってはいるものの、現時点(ワールドカップ)ではどう見てもアルゼンチンの方が力は上である。彼らにとって、「勝てばいい」を前提とした試合運びは、取れるときにとってしまえばあとは無理して攻めないこと。普段通り組織で守って、ゲーム・パフォーマンスを減らすこと。その為に考えられる手段は、ゲームをたくさん切ることである。ペナルティーからは確実にタッチに蹴りだし、ラインアウトなどのセットプレーの回数を増やす(ラグビーではボールがラインを割ったり、スクラムを準備する時間も試合時間として換算されるからだ)。カウンターアタックは確実なときにしか実行せず、仕掛けたとしても、安全なキックで陣地を稼ぐだけ。攻撃に関して言えば、ボールの大きな展開をなくし、ミスの少ないフォワードサイドか、キックを蹴ってゆっくりラインで追い、相手のキックを待つこと。故に、「勝てばいい」の戦略はゲームパフォーマンスを減らしてしまい、見ている人にとっては退屈な時間が多くなるものである(事実、この試合前半25分に最初のウェーブが起こった)。
 戦略を実行できる権利は両チームともに存在する。すなわち、勝負とはどちらがその主導権を握るかである。この点において、アルゼンチンは見事に「勝ちさえすれば」作戦を完了したのである。点差は確かに接戦である。しかし、アルゼンチンにはスコア以上の余裕を感じた。今年のジャパンの秘策はテクニカル部門だったそうだ。事実、情報量と分析量は世界一かも知れない(相手選手の目線やキックのクセまで分析をしたほどである)。しかし、テクニックやスキルとはつねに戦略の上に成り立っているものであり、その枠のなかで評価されるものである。((ファックスとEメールの違いのようなもので、どっちが優れているかって言う議論は用途(いわゆる戦略)がはっきりしないと答えなんて出ないのである。))今回のアルゼンチンは、サモア戦の時のチームとは全く違っていた。戦略が違い、スキルが違い、闘志が違い、緊張が違った。ジャパンも同じく、前回(ウェールズ戦)とは違っていた。しかし、その違いはアルゼンチンに導かれ、引き出されたものだった様に思われる。意図して変える事と変えられてしまうこと、大きな違いである。そして、それこそが勝負なのである。
 「時間」、限られているからこそ、コントロールしなければならない。敵がいるから、コントロールをするための戦いがある。さらにその戦いの為の準備すべてが「時間」にコントロールされている。よって、ここでは時間自体と戦わなければならない。敵と時間。どちらの戦いも、ひとつの強い方向がなければ勝てない。勝てるとするならばそれは格下の相手か、もしくは余裕があるときだけであろう。今回、残念ながらDプールではジャパンにとって格下の相手はいなかった。サモア、ウェールズ、アルゼンチンともある強い戦略を持ってジャパンをコントロールし、時間をコントロールしたといえるだろう。
 体を心配したくなるほどの魂の入ったタックル。指先の緊張を放った選手達。人生を背負ってワールドカップにのぞんだベテラン勢。その背中に高貴な畏れを覚え、息を切りボールを追う姿はスタンドの多くのジャパンサポーターにある種の緊張を与えてくれました。しかし、それとは別にゲームとしての勝負はもっと大きなところで決まった気がします。4年後、その魂を養いつづけ、その大きな勝負に、チームとして挑めるジャパンを期待したいと願いました。

 ジャパン12対33アルゼンチン

 これでジャパンの記事は終わってしまいましたが、他の試合の報告は続きます。是非、ご覧ください。 

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