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日本対ウェールズ 10月9日 土曜日 14:30
カーディフ・ミレニアムスタジア


 完成が危ぶまれたミレニアム・スタジアム。はじめての観戦。7万2000人を収容できるこのスタジアムは屋根が開閉式であるため、雨風の心配がない。と、思いたいところだったが、試合が始まると屋根はあけることになっているらしい。しかし、ほとんど風はないようで、試合直前までは屋根は閉めている為、雨の心配もこれまでよりなさそうだ。けれど、今後こういったボックス(屋根付き・半室内的)スタジアムがどんどん建設されれば、ラグビーやサッカーのゲーム自体を大きく変化するだろうし、トレーニング方やルールも変わって行くだろう。人間の力では及ばない偶然を出来るだけ削っていくことは果たしてスポーツの未来にとって、プレーヤーや観客にとってどのような影響を与えるのだろうか。人間の力を極力公平・平等に競う事は出来るようになるにしても、なんだか寂しい気がしてならない。

 そんなこと考えているうちに、「君が代」がながれてきた。よく見ると、ジャパンの選手が全員、肩を組んでいる。しかも、紺色のジャージで。はじめて見る、紺のセカンドジャージ。赤白でないのは残念だったが、チームがひとつになっている気もする。しかし、これが自然にそうなったのか、ある一人が声をかけて肩を組んだのか、どちらかは見落としてしまった。とにかく、失うものは何もない。7万人のウェリッシュを驚かして欲しいと祈った。

 キックオフ。今日もタックルが決まる。早い出足、低いタックル。ウェリッシュからも拍手が沸く。この試合で、目をひいたのはフランカー、グレック・スミス。スミスもゴードンと同じく、タックルではなくディフェンスを大前提としてプレーしている。自分の体を殺さないのだ。殺さないと言うのは、プレーできない状態にしないこと。いわゆる、倒れたり、パスしたあとのボールキャリアに無駄にあたってしまうような、足を止めざるを得ない状況を極力嫌うのである。
 この試合のほとんどの大ピンチを救っているのは彼のカバーディフェンスであった。しかし、フランカーである為、走り方がBKと違い、相手BKを追う姿はなんかは見ていて時に不安がある。しかし、その不安を一気に解消してしまう彼のタックルは、指先に張りがあり、タックルの瞬間、体全体が大きく伸びるのである。獲物を追っている野生動物のたとえがふさわしい。
 この日、ジャパン初のトライが生まれた。ウイング・大畑がこのコースしかないという走りでコーナーに飛び込んだ。地元のアナウンサーも「速い、速い」の連発。観客も大拍手。しかし、このトライを語るにはセンター・元木のその前のプレーをはずせない。セットプレーから2,3回の猛烈なタックルを決めたあと、最後はウェールズの選手がラックにする寸前のボールを奪ったのである。これがターン・オーバーとなり、大畑のトライが生まれた。
 スミスが野生動物とすれば、元木はガキ大将、いわゆる人間らしいさあった。マコーミックもそうだが、彼らはつねに相手と勝負している雰囲気があり,それはただの勝負と言うより、人間対人間のけんかと言った方がいい。両センター陣には気迫、迫力、意地、ときには怒りと言った感情も覗える。その気迫はこの日、ツイドラキにも明らかだった。本気になった時の、意地から沸き起こる一つ一つのプレーは、普段の笑顔から想像もつかなかった。
 人間らしいか動物的か、どちらも個性である為、その間に優越はない。スミスの様に、動物的で感情や気迫があまり感じ取れないにしても、怖さは存在する。どちらかを極めた空間はやはり見ていて心動かすものであった。

 最後にレフリーのミスジャッジでトライになってしまった場面について一言いいたい。後半の何分かは忘れたが、スタンドフからのパスを受けたセンター(テイラーかギブス)がそのままゴール下にトライを決めたやつである(すみません、細かい時間や名前は今度チェックしておきます)。完全にスローフォワードである。スクリーンにスロー・リプレー流れたので、観客も一目瞭然だった(笑いがこぼれる)。しかしこれがラグビー、判定を変えることなく試合は進んだ。さて、僕がここでほんとにいいたいのは、レフリー批判ではなく、そのトライにおけるウェールズのプレーである。おそらくそのセンターはダミーで縦に入ってきたのである。もちろんボールをもらう気はなく、オトリとして相手をひきつける為に突進してきた。しかし、スタンドオフは行きすぎた(自分より前に行ってしまった)そのセンターにパスしてしまったのである。これがサインだっかどうか分からないが、そのセンターは一瞬驚いた。明らかにスローフォワードの位置にいる自分にボールが来たからだ。しかし、ダミーであろうが、スローフォワードの位置であろうが、そのボールとってトライしたのである。スキル的に言えば全く難しくないキャッチだが、そういった臨機への対応、非常事態での対処、練習では起こらない状況において、普段のプレーをするのは簡単ではない。この点に関して言えば、練習で培われるスキルがものを言うのではない。このプレーにメンタル・タフネス(精神的強さ)を感じた。

 最終的な結果は大差となってしまったが、2トライを上げ、前半の激しい攻防は、圧倒的に少なかったスタジアムの日本サポーター達を幾度か喜ばした。ウェールズのサポーターも子供を誉めるように絶賛してくれた。いくつか、国際試合ワールドカップにふさわしくない、気持ちが逃げていたプレーが見られたが、あえてここでは言いたくない。とにかく最終戦、「ジャパンラグビー」をみせてほしい。

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